『きのうの影踏み』読んだ。

辻村深月の短編集。感想と言うよりは自分と言葉の話をしている。

 

13編、好みのものとピンとこないものとあったけど、わたしはこの中では「手紙の主」が好きだな。ハードなホラーやグロテスクを読み慣れているから、直接的に恐がらせにくるよりは、このくらいの、読者がそれを創ってしまうような内側から寄るホラーが好き。

 

全体的に短いので(短編集ですからね)、もどかしいところに手が届かない感じがします。でも、結論を言わない美徳もあるから、そういうのがお好きな方は好きなタイプのちょっとホラー小説だと思います。聞いていた話よりはホラー感がなかった気がするけど、その辺は自信ないな。なんたって高飛車とセンターオブジアースとスペースマウンテンを同じレベルの絶叫マシンだと思っている女なので、世にハードって言われるようなホラーと、どちらかと言うと“怪異”的な小説の区別がつかないんだよ。

 

ホラーと怪異、わたしの中の印象にすぎないけど、ホラーは「恐がらせにくる」もので怪異は「いま形成される恐怖」みたいな感じがあります。恐怖感を引きずり出すか、違和感に気付いて“それ”を創り出させるか。いわばホラーの主体はホラーであり、怪異の主体は恐怖を抱く読者あるいは体験者。なので一部のホラーは人によっては怪異になるし、その逆も然り。辻村深月の小説はその点で「怪異」だよね。